追悼:2020年に亡くなった映画の巨星たち

昨年10月に90歳で亡くなったショーン・コネリー。007=ジェームズ・ボンドを長年演じたことで有名ですが、007シリーズに縁なく一作も見通すことなく半世紀過ごした私が思い返すのは「アンタッチャブル」の老警官(アカデミー助演男優賞を受賞)、ハリソン・フォード演じるインディ・ジョーンズ博士のお父さん、「ザ・ロック」の老英国スパイといった役どころ。この老スパイは役名をジョン・メイソンといって、老後の007というわけではもちろんないのですが、「私は女王陛下のスパイだ」と自己紹介する場面では劇場内が小さくどよめきました。ショーン・コネリー=007=英国が世界に誇るスパイという連想は、虚構とは言え世間(?)の共通認識で差し支えなかったと思いますが、ロンドン五輪後は、開会式で007として本物のエリザベス女王と共演したダニエル・クレイグに更新されたかもしれません。

「アンタッチャブル」1987年/アメリカ映画/ブライアン・デ・パルマ監督

1930年代のシカゴ。禁酒法を逆手にとり闇酒製造と密輸で大儲けするギャング(=アル・カポネ:演ロバート・デ・ニーロ)を逮捕すべく、役所の垣根を越えて結成された法の番人たち(お巡りさんのショーン・コネリーの他は、主演ケビン・コスナーが財務省の捜査官、アンディ・ガルシアの刑事など)の特別チーム「アンタッチャブル」の命がけの攻防を描いた名作。実際にアル・カポネと渡り合ったエリオット・ネス捜査官の自伝をもとに映画化されました。

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昨年亡くなった著名な映画俳優にマイケル・ロンズデールもいます(享年89歳)。この人も007の敵役で知られているようですが、私にとっては「ジャッカルの日」でドゴール大統領暗殺を阻止する地味だけど有能な刑事、つぶらな瞳と口ひげがミニチュア・シュナウザー(犬種)みたいなルベル警部でした。

「ジャッカルの日」1973年/英仏米合作/フレッド・ジンネマン監督

1960年代フランス。ドゴール政権の転覆を目論む地下テロ組織は、政府機関の切り崩し工作により壊滅状態となるが、最後の切り札として凄腕の殺し屋「ジャッカル」に大統領暗殺を依頼する。察知した政府側も捜査を開始し包囲網を張るが、常にすんでのところで当局の手を掻い潜るジャッカルは、着実にドゴール大統領に近づきつつあった。

犯罪者ですがクールでスマートで、アクシデントに慌てずピンチにも騒がず、己の才覚のみを頼りに冷酷非情に切り抜けていくジャッカルにいつしか肩入れして見てしまう。傑作です。

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社会派映画監督として名を馳せたアラン・パーカー監督も昨年亡くなりました(享年76歳)。監督作品の「エンゼル・ハート(1987年/アメリカ映画)」は凝った映像美で今もカルト的な人気があるとか。当時人気絶頂だったミッキー・ローク主演、ロバート・デ・ニーロ共演。

ミッキー・ロークファンだった友だちにつきあって公開当時に映画館で観ましたが、グロや怖い描写が苦手な私でも、スタイリッシュな映像のおかげもあってか正視可能なオカルトホラーで怖いというよりは、当時はまだこんな言葉はありませんでしたがイヤ〜なミステリー略してイヤミスの範疇に思えました。この後も「バートン・フィンク」とか「マザー!」など聖書の世界観をテーマにしたホラー映画を観た時に味わうことになる、私が欧米人だったら、あるいはキリスト教徒だったらもっと怖かったのかな?という心許なさを覚えた最初の作品でした。

アイルランドの首都ダブリンが舞台の、プロを目指すバンドマンたちの青春群像劇「ザ・コミットメンツ(1991年/英・アイルランド合作)」もアラン・パーカー監督作品です。こっちはバンドをやっていた友だちに誘われて観ました。アラン・パーカー監督は音楽にも造詣が深かったそうですが、劇中音楽がカッコ良くて帰りに友だちと揃って映画館の売店でサントラCDを買った思い出。今時はこんな音楽の買い方ってあるのかな(^^;)

まとめ役のシッカリ者の男の子に、メンバーの女の子が恋をするのですが、まとめ役の興味関心は音楽そのものやバンド活動よりも、いかにバンドを成功させるかのマネジメントにあり「俺はモテたくてバンドをやっていない。恋愛が目的なら他のヤツにいけ」みたいな台詞があったのを憶えています。ビターな若者映画でした。

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数々の名映画音楽を生み出した作曲家エンニオ・モリコーネも昨年91歳で亡くなりました。「ニュー・シネマ・パラダイス」や前述「アンタッチャブル」のテーマ曲は、フィギュアスケートなど楽曲に合わせて行うスポーツでも使われる世界的な名曲です。他にも口笛のメロディが印象的な「夕陽のガンマン」のメインテーマなど、映画の名シーンとセットで思い出されます。

インド人俳優のイルファン・カーンも昨年亡くなりました。まだこれから活躍の場がたくさんあったであろう享年53歳。この人の名を世界レベルに押し上げたのはアカデミー作品賞を獲得した「スラムドッグ$ミリオネア 2008年/イギリス映画」だろうと思いますが、

私にとってイルファン・カーンといえば「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」の大人になったパイでした。亡くなって知ったことですがインド人では少数派のムスリムだったそう。ヒンズー教徒なのにキリスト教やイスラム教に魅了されるややこしいパイを演じたのは必然だったかもしれません。こちらも傑作です。

素晴らしい映画をありがとうございました。ご冥福をお祈り申し上げます。

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