裏切りのサーカス(原題:Tinker Tailor Soldier Spy/2011年/英仏独合作)
運動能力超人が大活躍するスパイ活劇とはひと味ちがうシブいスパイ映画です。経験不足の田舎スパイがテンパって一般人を殺傷したり、靴を履いたスタイルがアカの他人にさらす常態である文化圏において(なので日本人の私にはさほど違和感はなかったのですが)階下の敵に存在を気取られないよう、スーツにコート姿のイケメン主演俳優が靴下裸足という間抜けな姿になるなど「本当のところは、こんな感じなのでは」と思わせるリアリティがありました。
舞台は東西冷戦時代の英国秘密情報部(通称サーカス)。対東側戦略の度重なる失敗から、部下に二重スパイがいると確信するコントロール(サーカストップの役職名)だったが責任を取らされ辞任、やがて失意のうちに亡くなる。その右腕だった主人公スマイリー(ゲイリー・オールドマン)もあおりを食ってサーカスを去った身だったが、コントロールが密かに探っていた裏切り者特定を引き継ぐよう、サーカスを所管する英外務省から依頼される。冷徹なベテラン工作員のスマイリーだが、私生活では妻の裏切り行為に苦しめられ、しかし妻への執着はいっこうに捨てられないことに疲弊していた。
劇場公開時のキャッチコピー「一度目あなたを欺く。二度目、真実が見える」の二度見推奨作品だったようですが、私は今回ブログを書くために観た三度目でやっと色々腑に落ちた感じ(^^;)。込み入った内容と前後する時系列にそこらへんを説明する台詞もないので、ワケがわからないまま鼻面を引っ張り回される感があり好みが分かれる映画かもしれませんが、傑作だと思います。優男イケメンで見た目そのもののインパクトは希薄なゲイリー・オールドマンを補うように、ベネディクト・カンバーバッチ、トビー・ジョーンズなど顔面力の強い共演者揃い。その反面、主人公を苦悩させ続ける「美しく奔放な妻」の顔はしかとは見せない、主人公がかつて二重スパイになるよう熱心に勧誘するも寝返ることなく、今はソ連スパイ組織のトップとなって激しく敵対する「カーラ」にいたっては顔を全く映さない演出も上手いと思いました。
以下はキングスマン、コードネームアンクルについての概略です。
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