不機嫌な赤いバラ(主演シャーリー・マクレーンとニコラス・ケイジ)

不機嫌な赤いバラ(原題「Guarding Tess」1994年制作 アメリカ映画)

気難しい元大統領夫人をシャーリー・マクレーンが、彼女に振り回されっぱなしのシークレットサービスをニコラス・ケイジが演じています。元といえども大統領夫人ともなればアメリカでは大変な知名度があってイベントに招待される機会も多く、仮に元大統領本人が亡くなっていても、辞退しない限りは夫人にも生涯SPが付くということを知った映画でした。

静かな田舎町で隠居生活を送る元大統領夫人テス(シャーリー・マクレーン)。警護主任をつとめるシークレットサービスのダグ(ニコラス・ケイジ)は、やり甲斐を求めて政府要人担当への異動を願い出ていますが叶いません。何故ならテスが現大統領に直々にダグの任務延長を申し入れているからです。現大統領はテスの尽力で大統領になれた経緯があり、つまりテスが生きている限りダグの希望は叶わないということです。怒り心頭のダグは、これまでは引き受けていた任務外の仕事=お使いや夜食作りは断固拒否する!とテスに宣言しますが、直後に大統領からの直電で「彼女とうまくやるんだ。やれないなら犬の警護をやらせる」と倍返しされます。ダグが小さな抗議で溜飲を下げても即座に上手を打ちやり返すテス。名優二人の攻防は序盤の見どころです。以下はネタバレありですのでご注意下さい。

売り言葉に買い言葉で警護の辞退を政府に申し入れたテス。SPたちは屋敷から追い出され、残るのは料理人に秘書など「非暴力対応」のスタッフのみ。SPたちは仕方がないので敷地外から見守ります。その夜ダグが敷地沿いの路肩に停めた車内で一人張り番していると「コーヒーでもどうか」とテスが仲直りに現れます。屋敷に戻ると「コーヒーは眠れなくなるからお酒にしましょう。私もたまには飲むのよ」とテスは言いますが。常日頃警護しているジャックはテスが時折一人で深酒していることを知っていました。

地元のバーに繰り出し、お酒の力を借りてテスは実子とうまく行っていないことを吐露します。先だって久しぶりに息子がテスを訪れましたが、彼の訪問の目的は母親の名声を怪しげなビジネスに利用することでした。元大統領夫人は孤独でした。ダグも問われるがまま短期間に終わった結婚生活のことを打ち明け、二人は初めて腹を割って個人的に打ち解けます。

そんな冬の日、テスが暮らす田舎町に大統領訪問のニュースが届きます。テスを筆頭にスタッフ一同、さらには町をあげての歓迎ムードに浮き立ちますが、当日大統領は来られなくなりテスはその日以来元気をなくします。あるとても寒い日にピクニックに行くと言い出したテスに最初ダグは反対しますが、目に見えて気落ちしているテスが可哀想で「警護はあなた一人で」との望みも聞き入れます。湖畔での昼食後、うとうとしているテスをお姫さま抱っこで車に運び入れた後、他にスタッフもいないのでダグがピクニック道具を片付けていると突然車が発進、ダグを置いて走り去ります。またかよ!かつて似たようなイタズラをしたテスです。ダグは前回同様即座に地元警察に連絡し緊急配備を敷きますが、今回はなかなか見つからずFBIが出動する「元大統領夫人誘拐事件」に発展します。捜査過程でテスが実は脳腫瘍を患っていて楽観視できない病状であることが判明し、そんなことすら把握していなかったのか?とFBIに無能のレッテルを貼られるダグたち。

その後ダグの機転と活躍をきっかけに犯人逮捕、テス夫人も何とか無事救出!に沸く現場ですが、FBI仕切りのためダグたちSP一行は疎外され、薬品で意識を失っているテスを病院に移送するヘリにも定員オーバーで乗せてもらえません。仕方なく車で向かおうとしているところへ、どういうわけか離陸後すぐに着陸したヘリから「ダグラス・チェズニック!」と呼ばわる声が伝わってきます。俺だ!と駆け戻ると「夫人がSPなしはイヤだとおっしゃっています。乗って下さい」FBIと入れ替わりにヘリに乗り込むダグたち。テスは「犯人に気が付いたのはいつ?」と訊き、ダグが応えるとニブいのねえと相変わらずの減らず口をたたくのでした。

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この映画はクライム・コメディというジャンルかと思いますが、ラブストーリーのようにも思えます。テスはダグが好きなのです。公人だった夫(元大統領)の人生を振り返るテイのビデオを再生していたテスが、葬儀の場面で当時大統領SPだったダグが涙している姿をストップモーションで確認する場面がありました。恋ではないかもしれないけれど、テスは心優しいダグをSPとしてだけではなく人として信頼し愛しているのだと思います。ソウルメイトならぬソウルサン?

ニコラス・ケイジは本作のような、状況に翻弄され必死に右往左往する善人という役柄で一番輝くように思います。ジョン・トラボルタ演じるFBI捜査官が、潜入捜査のため全身整形で極悪人のニコラス・ケイジになりすますという無理あり過ぎ設定の映画「フェイス/オフ」でも、外見も中身も悪人のニコラス・ケイジのときよりも、中身は善人(=ジョン・トラボルタ)という設定のニコラス・ケイジのときのほうがハマっていました。トラボルタは悪人のほうが似合う。フェイス/オフ(1997年制作 監督ジョン・ウー アメリカ映画)

「ザ・ロック」でも文官=科学者なのに、元英国スパイのショーン・コネリーとともにテロ現場のアルカトラズ島に潜入させられる役でした。ニコラス・ケイジにショーン・コネリー、エド・ハリスという主演三人のこの告知ポスター↓を見て、素敵○ゲの揃い踏みに心震わせたのは私だけじゃないはず(^^;)。ザ・ロック(The Rock 1996年制作 マイケル・ベイ監督)↓

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