パラサイト 半地下の家族(2019年 韓国映画 アカデミー作品賞受賞)

新型コロナ騒動がなければ、三月に映画館で封切りを観るつもりでした。韓国映画初のカンヌ国際映画祭・最高作品賞受賞に続き、米国アカデミー賞で非英語作品としては初の作品賞含む四冠獲得の話題作。先月末から配信がはじまっていたようでAmazon Prime Videoで視聴しました。PG12(12歳以下の視聴は親か保護者同伴が望ましい)指定です。

アパートの半地下階に暮らす貧しいキム一家。事業を興しては失敗を繰り返してきた甲斐性無しの父、元ハンマー投げ銀メダリストだけど無職の母、希望大学に進学できず浪人中の息子と娘。誰一人定職はなく、内職で何とか食い繋いでいたある日、息子ギウの友人で有名大学に通うミニョクが訪ねてきます。「財運をもたらす」とされる山水景石を苦境の一家にプレゼントし、ギウには頼み事があるようす。二人で酒を飲みながら話すうち、現在家庭教師をしている女子高生について、自身が留学中の身代わりをつとめて欲しいと言うのです。浪人中のギウは「お前とちがって名門大学生ではない」と断りますが、ミニョクはその女子高生ダヘに恋していて、遊び人ばかりの大学の友人は近づけたくないが「お前は信用できる」と打ち明けます。なおも躊躇するギウに、ダヘは富豪パク家の令嬢で謝礼は高額なことと「妹のギジョンは器用だったよな?」と水を向けるのでした。以下大いにネタバレしていますので、これから観る予定の方はご注意下さい。

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美大志望のギジョンが偽造した学生証をたずさえ、ギウは高台のパク家を訪ねます。半地下のキム家とは天と地の豪邸に目を瞠っていると、ここは有名建築家が自身の住まいとして意匠を凝らした邸宅でパク家は二代目の住人なのだと、建築家の頃から住み込みで働いているという家政婦が説明します。パク家のヨンギョ夫人は(ハイソな)ミニョクの紹介だからとロクに書類も確かめず、娘ダヘへの教師ぶりも認められ採用が決まります。そこへインディアンの扮装をした息子ダソンがあらわれ、初対面のギウにおもちゃの矢を射かけます。11歳にしては見た目も情動も幼いダソンが夫人は気がかりで、好きな絵画に打ち込ませて精神的な成長をうながしてやりたいが「どの先生も続かなくて」と嘆きます。ひらめいたギウは「アメリカ帰りの芸術家で美術セラピストのジェシカ」として妹ギジョンを推薦し、後日ギジョンも家庭教師として採用されます。こうして身分を偽り、さらには策を弄して前任者を陥れ父はパク家主人の運転手として、母は家政婦としてキム家全員がパク家に「就職」することに成功します。このへんまではクライム・コメディとしてキム一家の悪賢さ・厚かましさも可笑しく観ていられますが、全員寄生が完了したところでダソンが、運転手と家政婦は同じニオイがする「ジェシカ先生もみんな同じニオイ」と無邪気に言い放ちます。その家独特のニオイってありますよね。。。パク夫妻は「失礼なことを。ごめんなさい」と気にしませんが、キム家では洗剤を変えて一人分ずつ洗濯するなど弥縫策が検討されます。が、ギジョンの「半地下のニオイだから、ここを抜け出さない限り無理」が結論となります。そして物語はサスペンスパートへ。

息子ダソンの誕生日、パク一家はキャンプ旅行に出掛けます。キム一家は勝手知ったる豪邸で自宅のように悠々と過ごし、いつしか降り出した雨を眺めつつリビングで酒盛り。高級酒のがぶ飲みで酔っ払ったギウはパク家の娘ダヘといずれは結婚する(ダヘはギウに恋していました。ん?ミニョクは??)、そうすればこの豪邸は本当に我ら家族のものだ!と怪気炎をあげます。お調子者の父ギテクは「さすがは俺の息子」とご満悦ですが、母チュンスクがギテクのお調子者ぶりをゴキブリに例えて一触即発になったり、娘ギジョンがヒステリーを起こし雷鳴にも負けない雄叫びをあげたり(映画でも韓国でも女性のほうが現実的みたい)と辛口の一家団欒をしているところへ、キム一家の策略で失職した前家政婦のムングァンが訪ねてきます。地下の物置に忘れ物をしたので入れて欲しいと雷雨の中インターフォンを鳴らし続けて執拗に懇願します。

周囲に不審に思われ通報されたりを怖れたキム一家は「住み込み」のチュンスク以外は身を隠し、ムングァンを入れてやります。地下室へ降りたまま戻って来ないので様子を見に行くと、ムングァンは壁際の収納家具を動かそうと四苦八苦していました。たまたま障害物がひっかかって動かせなくなっていた家具の後ろには隠し扉があり、階段がさらに地下へと続いています。最地下の空間にはベッドや机、冷蔵庫にトイレなど人が生きていける必要最低限な設備があり、驚いたことに衰弱した男がベッドに横たわっていました。男はムングァンの夫グンセでした。

韓国の成功者は、北朝鮮からの攻撃に備えて邸宅に地下シェルターを備える場合が多く、初代住人の建築家もそうしたが、パク家にはシェルターがあることを告げずに売り渡して外国に移住した。秘密の構造を知るのは続けて雇用されることになった家政婦の自分だけ。莫大な借金でヤクザな金貸しに追われる夫を地下室に隠した。密かに食事を差し入れて養っていたが突然馘首され、困ったがどうにも出来ずパク一家が出払うのを待っていたと、飢えて弱っているグンセに飲み物食べ物を与えながらムングァンは説明します。キム家以外にもパク家に寄生していた人物が居たのです。それも四年もの永きに渡って。

「不法侵入者」を通報しようとすると、金を払うから時折食べ物を差し入れて夫を隠してやって欲しい「お願いですチュンスクお姉さん」と涙ながらに哀願するムングァン。初対面なのに「どうして私の名前を知ってるのよ!?」後ろ暗さから詰問すると、息子ダソンとは今もメッセージをやりとりしていてパク家の動向は把握しているのだと言います。監視カメラの配線を切ってきたので、自分が侵入したことはパク家には知られていない、だからお願い・・・・驚愕の展開に階段で聞き耳を立てていたキム家の三人ですが、ギテク(やっぱり)が足を滑らせ、顔を知られているムングァンの前に全員で転がり出てしまいます。ギウが「お父さん」と口走ったことで四人が家族であること、どうやら(運転手と)自分は不当に職を奪われたらしいとムングァンは勘付き、スマホで一家の写真を撮影します。

立場は逆転し、リビングで飲み食いするムングァンとグンセ。キム一家は「逆らったら写真をパク家に送信する」との切り札で両手を頭上に挙げたままにさせられ手を出せませんでしたが、スキを付いて何とかスマホを奪います。危機を乗り越えたのも束の間、ヨンギョ夫人から電話が入ります。豪雨でキャンプどころではなくなったパク家は帰宅途上にあり、もうすぐ到着するので「キャンプ中止で不機嫌な息子のために、好物のインスタントラーメンを用意していて」という業務連絡でした。

食い散らかしたリビングとキッチンを大車輪で片付ける母と娘、父と息子はムングァンとグンセの夫婦をとりあえず地下に運び束縛します。グンセがギテクに語りかけます。色んな事業に手を出しては失敗し借金を重ねた(ギテクも似たようなものです)。老齢年金すら自分は該当しないようだ(本棚に何冊もの法律書があります)。だから多くは望まない。今は激怒している妻も必ず説得するから、見逃してここに住まわせてくれないかと静かに訴えます。長い隠遁生活で精神に少し変調を来しているのか、自分を地下室で生かしてくれる偉大な主人が帰宅した時は、お礼のつもりで階段のセンサーライトを手動で点灯させているのだと微笑みながら目を輝かせたりします。何とも言えない気分になったギテクですが、二人に猿ぐつわをして地下シェルターを封鎖し、リビングのローテーブル下に三人が隠れたところに、パク一家が帰宅します。

ダソンが食べなかったラーメンを替わりに食べつつ、夫人は誕生日を家で祝わない理由をチュンスクに語ります。過去の誕生日、ダソンは深夜のキッチンで幽霊(=お腹が空いて地下から出てきたグンセ)を見てひきつけを起こし救急搬送されました。それ以来誕生日は外で祝うことが習慣化したのです。お騒がせのダソンはこの日は庭でテント泊をすると言い張り、パク夫妻はしょうがないので庭が見えるリビングのソファで休むことにします。テーブルの下に使用人三人が潜んでいるとは夢にも思わない夫妻は性行為をスタート。と、主人ドンイクが鼻をうごめかせ「運転手のニオイがする」と言います。しないけど、あの人が加齢臭クサイってこと?という妻に、古い切り干し大根(韓国にもあるんですね)のような、地下鉄の中のような独特の体臭で「あの運転手は節度を守る良い使用人だが、ニオイは車内でも漂ってきて閉口する」などと説明しながら夫妻は行為に没頭していきます。キッチンで様子をうかがうチュンスクと、テーブル下で息を潜める三人。庭のテントでは、ちかちかと点滅する階段の灯りをダソンがじっと見つめていました。

夫妻が寝入って何とかパク邸から脱出した三人ですが、帰り着いた半地下の住まいは集中豪雨で水没していました。今夜の想定外のトラブルは全て、パラサイト計画を思いついた自分が招いたことだと、雑魚寝の避難所の体育館でギウはギテクに詫びます。母の銀メダルとともに何とか持ち出した山水景石を疲弊した顔で抱きしめるギウを「いいから、お前は寝ろ」とギテクは労いますが、翌朝早くパク家からの電話で三人は叩き起こされます。中止になったキャンプの替わりにギソンの誕生日を祝うガーデンバーティをするからと「休日手当」で全員召集されることに。チュンスクはすでにパーティの準備に忙殺されていました。

店をハシゴして高級食材や酒をどんどん購入するヨンギョ夫人に従い、袋詰め・荷物運び・運転手を勤めるギテク。夫人はその間ずっとパーティの招待客に電話をしています。「雨のおかげで空気が澄んで今日はガーデンパーティ日和」「大雨でPM2.5も洗い流されて本当に清々しい」夫人は昨夜の豪雨で被災した人がいることなど知らないのです。と、夫人が顔をしかめて車の窓を少し開けます。夫の言っていたギテクのニオイに思い当たったようです。半地下の困窮生活でも明るいお調子者だったギテクの顔がどんどん無表情に変化していくさまは、さすがの名優ソン・ガンホでした。

ケータリングや出張シェフも出揃い賑やかにガーデンパーティが始まります。地下シェルターに放置したままの二人を一刻も早く懐柔したいキム家の母娘。チュンスクは配膳でてんてこ舞いなのでギジョンがとりあえずパーティのご馳走を地下に運んで「もう少し待っていて」とフォローすることにしますが、ヨンギョ夫人がギジョンを庭へ連れ出してしまいます。入れ替わりに、招待してくれたダヘの部屋を辞したギウが山水景石をもって地下へ向かいます。シェルターではムングァンが息絶えていました。その場に居合わせなかったギウは知らないことでしたが、前夜ムングァンは何とか足の結束を解き、パク家に何もかもぶちまけてやろうと階段をかけあがったところ、キッチンにいたチュンスクが間一髪気付き蹴り落としたのです。階段から落ちて頭部を強打したことが原因で亡くなったようです。死体に動転するギウにグンセが襲いかかります。ギウは必死に逃れますが階段を上がりきったキッチンで頭部を山水景石で殴打され昏倒します。

グンセにとってムングァンは全てでした。唯一の家族であり、甲斐性無しの自分を見捨てない優しい妻で、隠遁生活を支える命綱でした。それをキム家が理不尽に奪ったのです。息子は頭部から大量に出血し意識がありませんが、更に頭上から石を投げ落とします。キッチンカウンターの包丁を手にとるとキム一家を探して何やら大勢の人がいる庭に出、まず見つけた娘の胸部に迷わず包丁を突き立てます。我先に逃げ出すパーティの参加者たち。崩れ落ちるギジョンと、再び現れた幽霊がジェシカ先生を殺すのを見たダソンもひきつけを起こし卒倒します。棒立ちのギテクに「傷口を押さえて止血!」と指示し、チュンスクがグンセに立ち向かいます。

突然現れた男の凶刃が家政婦に向いたのを見てとったドンイクは、刺された家庭教師を介抱している運転手に「息子を病院に運ぶ、運転しろ!」と命令します。我が子の危機の前には使用人の生死など知ったことではありません。応じないので「車の鍵を投げろ!」と叫びますが、ギテクが投げた鍵は格闘する二人の下に落ちてしまいました。グンセに馬乗りになられたチュンスクですが、落ちていたバーベキューの串を必死に拾うと、ハンマー投げ銀メダルの膂力を発揮し一気にグンセの横腹を刺し貫きます。男が無害化したっぽいので近づくドンイク。と、瀕死の男が「尊敬しています」と話かけてくるではありませんか。「えオレを知ってるの?」戸惑いながらも、死にかけのグンセの身体は戸惑いゼロの造作で押しのけ鍵を拾うドンイク。その時グンセの体臭が鼻につき思いっきり顔をしかめたのをギテクは見てしまいました。遠目に、血だらけのギウをダヘがおぶって逃げようとしていること、チュンスクがギジョンに寄り添ったのも確認しました。ギテクはグンセがとり落とした包丁を拾うとドンイクを深々と刺し、その場から逃亡しました。

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数週間後、奇跡的に意識を取り戻したギウはチュンスクとともに裁判にかけられます。公文書偽造、不法侵入の罪に問われますが、チュンスクが襲撃者を殺害した件は正当防衛とされ、揃って執行猶予となり釈放されます。ギジョンは亡くなっていました。半地下の住まいに戻ると、TVではパク邸での殺人事件についてワイドショーがセンセーショナルに報じています。忽然と現れた身元不明のホームレス(=グンセ)がパーティに興じる人々を襲撃するが返り討ちに遭って死ぬ。その渦中に突然、パク家の運転手キムが主人を刺して逃亡、依然行方不明という謎だらけの事件として世間を騒がせているようです。キム・ギテクはどこへ消えたのか?

事件が風化し警察の尾行もつかなくなった頃、ギウは元パク邸を見下ろせる山に登ります。今は事件を知らない外国人一家が暮らしていますが、玄関からリビングに続く階段の灯りが不自然に点滅していることにギウは気付きます。パターンを記録し照合するとそれはモールス信号で、地下シェルターに隠れたギテクが、いつか家族が気付いてくれることを願って毎晩発信し続けているメッセージでした(韓国は徴兵制であることとボーイスカウトがさかんな影響で、モールス信号を解する男性が多いそうです)。自分は地下シェルターで何とか生きていること(食べ物飲み物は主一家が寝入ったすきに台所に侵入し盗んでいる)、パク家が退居し空き屋だった間にムングァンの遺体は庭に埋葬し、今はその上に植栽が繁って露見しそうもないので心配するなという内容でしたが、ギウとチュンスクから返信する術はないのでした。ギウはいつかお金持ちになって元パク邸を買い取り、母とともに引っ越すことを決意します。引っ越しを終え母と二人、庭でムングァンを供養していると地下から父が出て来て一家は再会。。。そんなギウの妄想で映画は終わります。

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韓国がすさまじい格差社会だというのはニュースなどで時に聞く話です。学歴をステップに大企業や官公庁に就職することが、社会人としての成功や経済的安定への確実な一歩であるのはたぶん資本主義の国では世界共通だろうと思いますが、韓国には富のほとんどを一握りの財閥系企業が占めるという特殊な社会構造(ナッツ姫騒動で知りました)があって、その傾向が極端なのだとか。

学歴もなく前科がついてしまったギウがあの豪邸を買うためには、非合法社会で成功するしかないのでは・・・・というのが見終わっての感想でした。あとミニョクがギウを「信用して」ダヘを託したのは本当に人柄だけのことだったのか。無意識だったにしても貧しい浪人生の友人を下に見て侮っていたのでは。ミニョクが訪ねたキム家の半地下は、もとは北朝鮮の脅威が現実的だった時代に、防空壕がわりに建築が推奨された構造で、脅威が遠のくと貧乏学生や低所得世帯向けの住居となった「貧困の象徴」だそうです。ギテクはそんな半地下から、お金持ち用の豪邸地下シェルターに住み替えたわけで、つねに脅威と隣り合わせの韓国を象徴しているようでもあります。

ただ、ギウはグンセに何度も山水景石で頭部を殴打され脳障害が残っているということだったので、ギテクからのモールス信号うんぬんの下りから、障害と後悔がギウに見せた妄想だった可能性もあると思います。事件後ギテクの姿がパク邸周辺の防犯カメラに全くとらえられておらず「忽然と消えた」のならパク邸から出ていないと考えるのが一番自然で、とすると地下シェルター付きの豪邸が珍しくないという特殊事情があるのだから、警察は徹底的にパク邸を探ると思うんだけどな。建築家に意見を求めるとか、仮に建築家が亡くなっていたとしても役所に建築申請書類とかあるでしょうし。この重箱の隅は見終わってしばらく経って思ったことで^^;)作品世界への没頭を阻害するようなものではありません。役者さんもみんな巧いです。

格差や貧困がメインテーマの社会派作品は見続けるうち気が重く、しんどくなってチョイスを後悔するような映画もあったりしますが、本作はコメディやサスペンス、ミステリー要素を散りばめ132分があっと言う間のエンタテイメントでした。カンヌ映画祭と米アカデミー賞の作品賞両獲りも、ポン・ジュノ監督が若き天才と持て囃されるのも納得の傑作です。

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